解体前後

建物の解体

 新しい息吹を吹き込むには古いものを処分しなければなりません。築後かなり経った建物ながら改装や外壁の塗装などに結構手ををかけたこともあり見た目はそう古くは感じません。壊すのはもったいない、という声もあり、改築で済ませれば・・の意見もありました。 しかしこれでは全く中途半端なものになっていまいます。思い切って解体という選択です。

 子どもの頃から引越し族の家に育ったせいか転居にはそう抵抗感がありませんでした。ところが、実際に解体に際し内部の整理を始めてからすさまじい抵抗感が湧いてきました。
 この建物を事務所に使い始めて22年が過ぎました。いつの間にか長い時間が経過していただけでなく、広い家から狭いマンションに移った時点で収納仕切れなかったものをここに置いていたことが大きなダメージになりました。
 
 当時は一時的な保管程度として、屋根裏に安易に仕舞いこんだのですが、その後すっかり忘れていたものですから本来は不用物なはずです。しかしそうは行かなかったのがその中に目を通さずに捨てられない大事なものが含まれていたことです。
 大半は仕事の記録や資料など膨大な紙類でしたが、燃えないゴミの山とともに一部屋を占めくらい集まりました。加えてエアコン大小5基、冷蔵庫2台、テレビなどの電化製品や大型収納庫などが賑わいに加わります。
 事前に見積もりのために解体業者に来てもらい品定めをしてもらいました。解体とは別にトラック1台は必要だといわれ、捨てるための費用が相当な額になりました。時代とともにまだまだこの類の負担は大きくなるようです。年金で暮らす家を最初に襲ったのがこの処分費です。
 
 家庭用のゴミは燃える・燃えないに関係なく決まった日に出せば良いのですが、事業用のゴミ類は引き取ってもらえません。これらは解体業者の見積もり範囲なのですが、置いておくと足の踏み場もなくなってきます。やむなく産廃専門業者の収集車の出番となります。これもバカにならない金額になりました。

 建築屋さん選びは慎重であることは最大課題ですが、解体業者の選択はある意味一番大事です。というのは近隣とのトラブルの原因をたどっていくとこの時の作業の不信感が尾を引くことが多いとのことです。
 静かに綺麗に丁寧に・・・当然とは言っても相当気を使う場面です。何よりも近隣にとってはお互い様とはいえ迷惑なことに違いありません。
 そんな訳で、解体業者の見積もりはピンからきりまであるそうですが、安いだけ!は排除し適正価格で、しかもオーナーの顔をみてお願いすることも大事です。

 年明けから本格的に整理に入ったのですが、荷物の処分と移動がこんなに大変だとは思いもよらないことでした。第一体力が落ちていることを実感しました。22年前一人で持ち上げた荷物が一人では降ろせない・・・情けない現状に愕然としながらも放っておくわけにも行かず一人ぼっちの悪戦苦闘が始まりました。その結果は疲労困ぱいとなり、かなり弱気になり精神的な疲れが増大しました。

 マンション住まいは捨てる技術だと友人に言われたことがあります。この教訓が活かしきれなかったツケが今頃来たのですから、学習能力の低い自分を改めて反省しました。
 今回思い切って大量の処分をしたのですが、それでもかなりの量が残り、部屋がゴミの山になり、すべての処理は解体当日の朝までかかりました。
 この苦闘を見かねて、東京から応援部隊が来てくれました。女性ながら家内を含め二人の助っ人は大きな力をだしてくれました。これがなかったら私は寝込んでいいたかもしれません。家を建ててぽっくり・・という意味が少し判りました。
 知人が言いました「その年でようそんな馬力がおますな!!」馬力なんかあるかいな!言い返す元気も消えうせる現実でした。

 この作業に一ヶ月忙殺されました。解体の日は2月3日に決まりました。

 この日は木曜日にあたります。前日まで東京にいたのですが、すべての片づけが終わらないうちに家を出たことが気になっていました。どうしても内部の最終片づけが終わらず見切り発車のような気分で落ちつかなかったことも事実です。

 2月2日羽田空港を飛び立ち我が家にたどり対t着いたときは夜の九時を過ぎていました。この時間からではとても後片付けは無理です。何しろ電気が止まり暗がり状態では実質何も出来ません。

 当日の朝は早目に起きだし現場に出向きました。とにかくきょうが最後となる建物の外観の写真を撮りました。恐らく何年かすれば思い出の写真になるでしょうか・・・。

 
 中に入るとまだ捨てきれず残った多くの残骸が目にはいり思わずため息がでました。
 ただ救いだったのは、私の仕事場であった2階は、壊すから・・と放置したままではなく、私の留守中に家内が床の清掃をふくめきれいにしてくれていたことです。なぜかほっとした思いでした。

 一人で最後の片づけをしているとまずNTTが回線の撤去にやってきました。
 次に来たのが光ケーブルの撤去です。そして水道、ガス・・・色々な作業が集中するので結構忙しい時間でした。
 
ただ、大変だったのはガス工事です・・・解体すると告げていたのに業者はメータを止めて転居用のカードをぶら下げただけで帰ってしまいました。
 このままでは解体作業ができないので再び業者を呼び戻しましたが、翌日のことになり大慌てでした。
 案の定この作業は長い時間がかかり大変だったようです。

 2月3日から始まった解体作業は、結局12日の遅くまでかかりました。
 こんな木造建築の解体に10日間も時間がかかるとは予想外でしたが、
いずれにしても無事に作業が終わったことを喜んでいます。

 更地になってみると、狭いながら結構いい形の土地のようです。 これから地盤の検査や登記上の位置関係との整合性や図面と実測値の確認などを行います。
 住まいを作るということはやはり根気と細やかな心つもりが必要だと感じたのが解体現場から学んだことです。

 この間の記録は「工事日誌」のページをご覧ください!!