契約と工事概要

 打ち合わせ
 一級建築士の田原さんには何度か足を運んでいただきました。その都度提案された図面から新しい発見があり、私なりにあれこれ質問や注文が飛び出し、思わず苦笑や冷笑を誘います。
 私なりに大真面目な問いかけなのですが、その前に資金に糸目をつけない宣言をしろ!!と心の中でつぶやいていたのではないかと思ます。
 図面が出来上がり見積もりが出てからあれこれ値切るのは本意ではなく、まず資金の限度額を正直に示しました。
 床下から小判がザクザク出てくるわけでもなく、この範囲を越えると潔く計画を断念するのも一つの選択だと自分に言い聞かせていたことも事実です。

 今回の「年金で暮らす家」計画は私のライフプランであり、あくまで個人的な特性の主張です。決してすべての人の標準になるものもなく、ひとつのスタイルの紹介ですから共鳴する方がいらっしゃればそれなりにありがたいという程度でしかありません。
 それは私にしか当てはまらないこだわりの部分に、どの程度までの費用をかけて納得できるかという自分の勝手な課題にどこまでお付き合いいただける人とめぐり会えるのかの検証ですからこの組み合わせに標準は無いからです。

 設計図をみるとそれなりに工夫の跡が見られます。こんな狭い家にも関わらずトータルすると一つの部屋が出来るくらいの収納スペースを設けました。床下、屋根裏、玄関脇、階段下など・・・当然ながら通常の収納スペース以外の注文ですが、これにも木造3階建ての制約が発生します。
 具体的な話が進んでいるときも色々な情報が目に留まります。ほとんどがインターネット情報ですが結構刺激的なものも多くあります。

 【量産される「危ない間取り」の住宅。「木造3階建て」の「9割は要注意」。行政側も保険で「欠陥住宅」に備える時代に!】
 こんなタイトルの本が売れるのも不思議ですが、9割も危ない住宅が野放しなんてにわかに信じられないことです。
 『なぜ90%の人が家づくりに失敗するのか』なんていわれるとついつい興味がわきますが、要するに家を買うということは庶民レベルではそう何度も経験することがないので素人の客は騙しやすいと考える業者が現実にいるということでしょう。

 巷で噂される情報の一つ一つを確認し納得できた段階で次に進むのが理想的ですが、説明より実際に見ることも大事なことです。そこで私のプランとほぼ同じものが建築中だという田原さんの紹介で大阪まで見学に行くことになりました。
 興味は基礎部分と構造体です。使用する材料については検査機関の条件を満たしたものが使われるという程度の知識しかなかったのですが、2階建てに比べさらに重量がかかる1階部分の構造には特に興味がありました。

 これでもか・・というほど堅牢さを売り物にする工務店もあります。柱の数が多く建築途中でも向こう側が見えないくらい隙間の無い作りです。信頼性は抜群で人気があるようですがこれについても確認しました。
 とにかく、内装のきれいな建て売りではなく、すべて自分の目で確かめるというのが今回の決心ですからこの見学の機会は大いに参考になりました。
 現地を見学して、決して広い家ではないんだ!だから知恵を出さねばと再認識して帰途につきました。
 
 今回タブーに挑戦したのは、屋上のルーフテラスです。8階のマンション住まいのころは、最高の眺望でした。家内はこの景色が気に入りずっとここで暮らす覚悟であったようです。
 お向かいの淡路島や、明石海峡を行き交う船や大橋のイルミネーションを見るだけでも楽しい風光明媚なところですから家族全員のお気に入りでした。
 そうなれば例え小さくても明石海峡大橋を一望でき、公園に直結する松林と淡路島の島影をいつでも見られるビューポイントが欲しくなります。屋上に自由に出入りしたいという思いを実現したいと強く感じました。
 敷地が狭い庭も無い・・・それなら少しでも土地を買い足したイメージの空に直結するスペースは何物にも代えがたい価値があるということです。
 ここにも木造3階建ての制約が当然ながら出てきます。しかし問題のルーフテラスはほぼ満足度の高いイメージになりました。

 キッチンは私の裁量外です。すべて家内に一任です。図面が出来てからどうしても対面キッチンにしたい・・・という要望があり、休日を利用して各メーカーの展示場に出向きました。
 噂には聞いていたもののそう関心がなかったせいか、行ってみるとこれはもう芸術品といえるもので驚きました。
 こんな立派なキッチンを備え本当にこの設備にみあった料理が出来のだろうか・・そんな嫌われごとが浮かびます。

 我が家で意外と好評なのは家内が焼く自家製のケーキ類です。数種類のメニューがありますが、これが結構美味しくて私の大好物です。
 ボランティア活動で作った古代米なども材料にして新しい作品も登場します。素朴な味わいは朝食やデザートにも合い、何より健康食です。
 自家製のクッキーやケーキが登場するという幸福感は大切にしたいと我が家では大歓迎です。
 家内の主張は、プロが作るケーキと我が家の違いは単なる味ではない!ケーキは幸せな時しか焼けない!!プロは売るためには悲しくても焼かなければならない。
 この違いはあまりにも大きい!というのが彼女の言い分。確かにそうなのかもしれません。我が家にケーキが登場する限り家族は幸せを共有できるということでしょう。

 このベースがキッチンですから、レイアウト時点から最大限のリクエストに応じなければなりません。それにしてもすごい値段のついたすごいシステムキッチンに惚れ惚れします。
内心はこんな高いものが必要なのか・・・それより財布は大丈夫か!です。

 実に様々な課題がでてきます。その時々に相談や注文にも応じていただきました。ここでも提示金額を出来るだけ越えないという条件を活かしながら・・・。
 この頃には田原建築士もある程度の覚悟ができたようです。何より私の特性を理解していただいたのかもしれません。

 何度かのプラン提示の時こんな話がでました。「もう既に無料相談の領域をでているのでそろそろ契約をして欲しい・・・」
 まだプランに関しあれこれ検討中でしたから、私自身そんな意識が薄かったのは事実ですが、商売としての立場とすれば当然のことでしょう!
 ただ反面、この段階に至ってまだ私が知らないうちにトンズラすると思って居るのか・・・と少しばかり思ったのも事実です。
 ここまできて大の大人を振り回して「要りませんわ!」にはならないのですが、口約束では担保にならないという現実もあります。信頼を基本にしていることを確認し、年が明ければ早々に契約をすることで日程を調整しました。

そこでイメージを少しばかり・・・

 間取りの公開がいいのか少しためらいもありますが、興味をお持ちの方がいらっしゃるならご紹介するほうがいいかもしれません!
 とにかく敷地が6m×10m程度ですから、建て物は5mを少し越え奥行きは7m少ししかとれません。どうしても限られた形状になってしまいます。
 必然的に与えられた形が格好良く感じるかは気になるとことですが、最大の課題は機能的な住まいをこの敷地の中でどう作るかです。
 
 検討の結果屋上を設けたので、頻繁に上り下りすると地上から4階までを往復することになります・・・いざ生活が始まるとどうなるか興味深いところです。
 考えてみると以前の住まいは階下にガレージがあり、階段を上がり玄関までたどり着きます。地面からみると私の居住空間は実質3階のようなもので、さらに屋上があったのですからそう変わらないことになります。
 当時は意識をしたこともありませんでしたが、こんな考えに及ぶということは年齢のなせるものだと思っています。

 1階部分


 
図面の上が北を示します。道幅は6M少しあり、玄関側は4mの私道です。
 
 用途地域は第一種住居地域で、建蔽率は60%ですが角地指定で70%の適用を受けます。
 この意味は大変大きく今回の建築には大きく貢献しました。容積率は200%、準防火地域で第5種高度地区です。

 一番貴重な空間にガレージを作ったことになりますが、これは人が何を言おうが必須条件でした。
 問題はこの大きな開口部を1階に作るのですからそれなりの対策が必要だということです。

 とにかく収納スペースがほしいということでこのようなレイアウトになりました。このフロアの洋室が私の空間です。床下収納も大きく取りました。

 2階部分


 2階は団欒のスペースです。狭いことを顧みずに大きな注文を出したのが対面キッチンでした。お客様にお尻を向けないという配慮でもあります。

 
 人が集まる家は活力があります。狭いからといって人を遠ざけることは良くないことです。広い狭いは理由ではなく、わいわい言うのもよし、料理を楽しむのも良し・・・
 狭い空間ですが人の輪が明るく大きく広がれば最高です。これはホストとしてゲストとの一期一会の大切な時間を過ごす貴重なスペースですからそれなりの気配りは必要です。 

 正直迷いながらこのレイアウトになりました。結果は吉とでるか判りませんが、要は心のもてなしをどうしたいかが課題であることに違いありません。

 トイレも浴室もこのフロアです。各室へのLANケーブルや電話回線などもここに集約されます。
3階部分
 
 
寝室が3階ですから気がかりなことは夜中のトイレです。寒い季節は少しばかり負担が大きいかもしれません。とにかくこれを機会に不摂生をしないで朝までぐっすり眠る生活を目指し努力します。

 仏間を作りました。これは必須条件でした。説明するまでもなく私にとっては意味のある大事なことです。

 屋根裏収納を大きく取りました。準防火の基準を満たすために相応の出費が必要になりますが、この空間の意味は大きいものです。
 実際の住み心地については、これからのレポートに委ねますから少しお時間をください。
ルーフテラス


 8畳程度のルーフテラスですが、使い道は色々あります。
何と言っても自由空間ですからあると無いのとでは大きな差が生じます。

 あくまで私のこだわりの部分でしたが、きちんとした対応があれば建築上何ら問題は生じません。
 木造建築の自由度の範疇と法的な制限などの整合性を考えながら対応すれば結構重要なスペースとなり価値があります。

 趣味のアマチュア無線のアンテナ設置の場所でもあります。
 庭がないのですからここにプランターを置いてミニ菜園も楽しいのではないかと思います。
 ここからは明石海峡大橋や松林が見えます。(たぶんそのはずです・・・)