駅から5分以内の土地
 
駅から近いということ 

 マンション住まいの前は一戸建ち住宅に住んでいました。当時は祖母と母と子どもたちの6人家族でした。郊外の高台にある比較的環境の良い住まいでしたが、JRの最寄り駅からバスに揺られておよそ15分の所でした。一つ手前の駅からだと歩いて20分ほどですが、ここにはバスもタクシーもありません。
 この20分というのは駅までの下り坂の場合で、帰りは坂道を延々と登り25分から30分かかります。特にお酒を飲んで帰る夏の夜は地獄絵そのものです。サウナに入っているようで帰り着いた時にはアルコールはすっかり消えていました。
 
 バス代は200円でしたが、毎日通学する子どもたちと家内・・そして週に何度か外出する母たちのバス代を入れると一ヶ月4万円を下りません。
 私は車を使うのでめったにバスに乗りませんが、年間に換算すると50万円以上がバス代に消えます。母は既にこの世に居ませんが、駅に近いということはこの経費が不要ですごく経済的だということが判ります。 
 今のマンションを選んだのは、三つの駅に歩いて行ける距離だという立地条件からです。海が見えて駅まで歩けて空気が良いのですから言うことがありません。
 
 これまで30年数年間小さな事業所を営み何とか生きながらえてきたのですが、経済情勢も好転せずこのところあまり良い話を聞きません。
 周りを見渡すと友人にも変化があり、特に企業経営者の断末魔が聞こえます。私自身の勤労意欲は衰えていないのですが、どこかでしぼんでいく部分を感じます。少々気疲れしている自分を客観的に見ているのも事実です。
 
 2010年猛暑の夏、駅に近いというメリットを活かし今の事務所を解体しここに住んではどうかと思いつきました。やがて車の運転もままならなくなります。そうなると駅に近いという条件は最大の利点となります。
 すべてを処分して田舎に住むならずっと安心して暮らせる環境が得られると思いますが、私にとってはそれは海外移住と同じ理屈になり飛びつけません。単に損得で判断できない生き方の問題でもあります。
 
 これまで多くの車が私の足代わりでした。車大好きな私が、よちよち歩きながら駅までの道を歩いている姿を想像すると自分ながら心が沈みます。考えるだけで精神的に相当なダメージですが、やがては避けられない現実であることも自覚しています。
 
 建築予定地とJRの最寄り駅の先端までは直線では100mしかありません、ただ改札が一番遠い西の端にあるのでぐるっとUターンするので5分程度歩くことになります。
 マンションは47年でその資産価値は急激に落ちるという事です。狭い土地ですが駅に近いということはそう極端な価値の下落はないというアドバイスもありました。
 それなら狭い土地を有効に使うことによって自分自身をリフレッシュする機会が生まれるのではないかと密かに思ったものです。