あいえんきえん

縁(えにし)の力

 四字熟語に「愛縁機縁」という言葉があります。「縁は異なもの」という言葉も同じ意味ですが、この「あいえんきえん」は、合縁奇縁・合縁機縁・相縁奇縁・愛縁奇縁・愛縁機縁などの漢字で表され、「縁」という文字が意味する「ゆかり」、「関係」、「原因」などから導かれる結果そのものが人の営みと密接に連動していることを語っている言葉です。
 人と人の出会いや交わりにおいて、目に見えない縁という力が様々な形で働いているという教えでもあります。

 住宅選びは縁談のようなものだと思っています。まさに合縁奇縁だといえます。
 家探しの縁結びに仲人役があるとしたら、それは広告などの情報です。これは溢れんばかりの数があるのですが、単に情報に触れてもその先に登場する人や環境と関わると、その後のご縁が消えてしまうこともよくあります。
 多くの情報の中から相性の合うものを見つけ出し、最後までお付き合いできることは結構難しいものですが良縁探しの努力の結果えられる成果が正にご縁そのものだと思います。

モデルハウスでの経験
 近くに大きな住宅展示場があります。家つくりを考えるなら一度は訪ねる価値があると薦められたハウスメーカーもそこにありました。
 有名会社が軒を連ね、狭小住宅など相手にする必要が無いメーカーばかりでしたが、休日に散歩をかねて恐る恐る訪ねることにしました。
 どこも豪華で底抜けに広く、頭に描いていたコンセプトが総崩れになるほどです。軽自動車を見に行ったら、高級車だけが展示されていたというようなイメージでしたが、以前の住まいならともかく「年金で暮らす家」を考えているのですから、そのハードルの差に戸惑いました。

 どのモデル住宅のスタッフは例外なく丁寧な対応ですが、どこかでマニュアルに沿ったセールストークが最優先され、痒いところに手が届いていないもどかしさを感じました。
 お目当ての会社の展示場で若い担当者が声をかけてきたのですが、無知な客を指導してやるといった姿勢が強く、質問の意図から随分かけはなれた坪単価のからくりなどを一方的にしゃべりだし閉口しました。
 いい歳の夫婦がわざわざ展示場に来るのですから、冷やかしでないという判断もつかないセールスマンでは一人前とはいえません。
 この若者の不遜な説明にすっかり気落ちして帰ることになってしまいました。耳にするこの会社の理念はすごいのに、担当者のレベルはまったく相反するもので、成長会社という噂の影に隠れた人材確保のレベルをみた思いでした。
 お客様は大事で一生の買い物だから・・・など耳にたこができるほど聞かされますが、結局は今風の流行の家を薦めれば売れるという営業姿勢が会社を成長させたのかもしれませんが、もしそうならそんなに甘い世界でもないと思います。
 
 この歳になってバカにされるかもしれませんが、子どもの頃小さな隠れ家を作りあれこれ想像の中に入ったように、あれもしたいこれも出来るだろうか・・・の大人版の遊びをここに再現させても良いのではないかと勝手に思っています。
 これは団塊の世代の遊び感覚を、無知な客を指導すれば喜ぶと勘違いする若いセールスマンとの意識差であるようです。私が求めるものは住宅展示場にはないことを悟り、この経験から発想を変えることになりました。

 家作りはある意味ときめきへ挑戦ですが、今回ばかりは人任せにせず老化し始めている自分の考えに間違いがないかを自問自答しながら、知りたいことややりたいことに対し真面目に応対してくれる相手を見つけ出し、それを実現させることが可能なのかまず確認したいという思いでした。
 相談相手として物差しが合わなかった住宅展示場は潔くあきらめこの条件を他の場に移しました。
 住宅メーカーのモデルハウスは、大きくすることには無限に対応できるようですが、小さくすることは最初から出来ないということを私たちに知らせる場であったようです。

お相手探し
 よくよく考えれば莫大な広告費が上乗せされている大手メーカーと私の思いは元々無縁だったようです。仕切りなおしの第一歩はとにかく知名度より誠実に話を聞いてくれる相手探しが一番の課題となりました。
 学生時代の友人に1級建築士という肩書きがぞろぞろ居ます。同窓生です。今では巨大とは言えないまでもバブル期を経て大きな商いをしている者も居ます。今苦しんでいる者もいます。
 持つべき物は友人ですから、その門を叩けば簡単かもしれませんが、話をするまでもなく今の私の価値観と一致することはありえないと判ります。
 
 私の仲人は建築会社を営んでいました。最初に事務所を作ったときは冗談の気持ちで失礼な位の金額を提示したのですが「いいよ!それでやってみよう・・・・」と見る見るうちに2階建ての建物が出来上がりました。
 その会社の役員からはブーイングだったことは言うまでもありません。聞くところによると在庫の資材をフル活用したようですが、鉄骨の構造体は流用はできず大赤字の仕事をさせてしまったことを反省しています。

 これは例外ですが、なまじっか友人を訪ね無理を言うよりこの機会に全く新しい出会いから未来への糸口が掴めれば嬉しいことだと思いその作業に取り掛かることにしました。
 そうなれば必然的にインターネットから得られる情報検索です。情報はまさに玉石混合・・溢れんばかりにあります。
 もっとも大事なのがネット情報の真贋の目利きです。自己責任の極地ともいえるこの見極めは直感的かも知れませんが、感性豊かで冷静に観察する力がある意味最大の課題であることは間違いありません。

 そんなめぐり合いはあり得ない・・・という意見もありました。各社に見積もらせて値切り倒せ!!そんな無責任なアドバイスもありました。

求める条件
 私が想定した課題は実に簡単ですが、また実に難しい注文も含まれていました。
◎ 「年金で暮らせる家」ですから堅牢であることを絶対条件に、割り安であること。
◎ 狭い敷地を最大限に使うため、やむなく3階建てにすること。
◎ 誰が何と言っても車はこの敷地内に収め余計な出費を避けること。
◎ 宝物(ガラクタ)が多いので収納スペースの限界に挑戦すること。
◎ 庭が無いので屋上にルーフテラスを作り最低限6〜8畳程度のスペースを設けること。
◎ 新たなローンなどと無縁な身分ですからすべて自己資金で賄えること。
◎ 想定資金を越えるなら無理をせずあっさり計画を断念すること。
◎ まだまだあります・・・・。

そしてインターネットがその出会いを作りました。