中波に関するお話し

1.AMとFM
2.AMラジオと短波放送
3.極極超長波、テラヘルツ波
4.短波放送
5.周波数の分類
6.波長と周波数
7.コールサイン
8.ノイズと受信障害
AMとFM
 FMという言葉を知っていてもAMを知らない人が多くいます。無線による通信では音声などの情報を、何らかの方法で電波に乗せてやる必要があります。それが”変調“という作業で、例えばAMやFMのラジオ放送は、低周波の音声信号が高周波の電波に載って伝送されます。
 音声信号の周波数範囲は20kHz以下の低周波ですからそのままではアンテナからは放射されませんが、変調をかけて数百kHz以上の高周波信号に変換すると効率良く電波が放射されるようになり、遠距離まで届きます。

 ラジオで受信された放送波(高周波の変調信号)は、ラジオ内部で再び低周波の音声信号に変換されて、スピーカなどから音として聴こえるようになります。
 このような動作を電気的に行うラジオ放送は、振幅(AM)変調という低周波の入力信号の変化に応じて、高周波の正弦波の振幅を変化させ、入力信号がプラスになる部分では振幅が大きくなり、逆にマイナスになる部分では振幅が小さくなるような変化を作りだしています。これがAMラジオなどで用いられている振幅変調方式です。  この方式は比較的歴史も古く、一番身近なAMラジオ放送以外にV・UHF 航空無線がこの型式です。

 一方、対比する周波数(FM)変調は、FMラジオやテレビの音声などで用いられている変調方式で、低周波の入力信号の変化に応じて、高周波の正弦波の周波数を変化させています。入力信号がプラスになる部分では周波数が大きくなり、逆にマイナスになる部分では周波数が小さくなるような変化です。。
 ちょっと難しい説明になりましたが、この変調方式により電波の占める周波数の幅が異なります。当然使う周波数の幅が広いほどゆったりとした情報が送れますが、低い周波数では能率が悪くなります。
 AMとFMは、周波数を表すものでも放送の種別を示すものでもなく、変調方式の違いを表すものであることが分かります。


 AMラジオと短波放送
 AM放送は振幅変調 (AM) によるラジオ放送ですが、日本で「AM放送」「AMラジオ」という場合は、一般的に中波放送を指しており、AM電波を使う短波放送は含まないことになっています。
 日本の中波放送ラジオの周波数は531kHz〜1602kHzの9khz間隔で割り当てられています。以前は10Khz間隔だったのですが1978年11月23日から現在の9kHz間隔となりました。

 AMラジオは伝送周波数帯域幅が狭く、変調方式の特性として家電品から発生する家庭内ノイズや雷発生時に起きる自然界ノイズ等に影響される事が多くあります。またFM放送に比べて音質が劣るため、スポーツ実況中継・ニュース・交通情報などの情報を提供するような生番組やトーク番組が主に放送されています。
 多くの中波局ではステレオ放送も行われていますが受信側の普及度はさほどでもなくそう重要視されていないのが現状です。

 もう一つの特徴は、放送局から到達する距離が長いため、1つの都道府県内で放送を行う県域放送、複数の都道府県にまたがって放送される広域放送があって、これが中波ラジオの遠距離受信の魅力となっています。
 方やAMに対比するFM放送は、超短波放送と言われ、日本では76-90MHz、諸外国では88-108MHzを使い周波数変調 (FM) を用いて放送されています。
 AMとは異なり搬送波周波数間隔が100kHzあり、伝送できる周波数帯域も広く、雑音に強く何よりAM放送に比べて高音質のため主に音楽番組等が放送されています。
 またその性質を利用して、音声多重放送(ステレオ放送)、文字多重放送(愛称・見えるラジオなど)が行なわれています。 これがAM、FMの根本的な相違です。


 極極超長波、テラヘルツ波
 周波数の表示がサイクル(Kc)からヘルツ(Hz)に統一されたのはいつだったでしょうか・・。電磁波が1秒間に振動する電磁放射の数を数値に表したものが周波数です。
 電波の周波数による分類は、簡単にいうと極極超長波(ごくごくちょうちょうは)から始まって極超短波(ごくちょうたんぱ)までというのは少し前の常識で、いまではセンチメートル波・・テラヘルツ波と光と電波の中間領域まで電波は使い道があります。しかし限りある資源といわれるように無尽蔵のものではありません。そこで決められたルールによる使い方が求められています。電磁波(電波)と光はいわば延長線上にある仲間みたいなものです。

 ここでは、主に中波についてお話ししていますが、ラジオ機器には中波はMF(Medium Frequency)あるいはMW(Mediumwave)と表記されているものが多く、300kHz〜3MHzの周波数の電波をいいます。
 中波の電波の伝わりかたの特徴としては、昼間は地表波によって比較的短距離しか届きませんが、夜間になると電離層(E層)が電波を反射するので近隣の海外を含めて遠方のラジオ局が聞けるようになりますが、放送局同士の混信が激しくなる欠点があります。
 本来の放送ではありませんがAMラジオで受信できる特殊なものとして、高速道路等で路側の同軸ケーブルから漏洩させるAM電波を使って行うハイウェイラジオなどに1620kHzなどが使われています。一般のラジオでは聴けませんが中波放送帯のすぐ上の1670kHz付近では、各地の灯台が海上などの船舶用の気象情報を放送しています。このような伝搬特性があるため、国際的な調整により周波数と空中線電力が定められています。
 中波とは幅の広い電磁波の帯域のごく一部を表したものと言えます。


 短波放送
 中波についてはお話ししましたが、多くのBCLファンがいるのは短波放送でしょう。短波ラジオ放送は、主に全国放送、国際放送用に使われ日本ではラジオ日経、NHKワールド・ラジオ日本などが有名です。変調方式は、基本的には振幅変調(AM)ですが、一部にはSSBも使われていますが、一般の受信機では聞くことができないことがあります。
 時代の流れですが最近、短波放送においても、ヨーロッパを中心として「DRM」と呼ばれるデジタル放送を行う動きがありますが、日本では今のところ短波放送をデジタル化する動きはありませんが今後の課題として残っています。
 短波放送用の周波数は、通常は4MHz〜26MHzで放送バンドによってそれぞれの特徴があります。
120mバンド:2300〜2495kHz - 俗にトロピカルバンドといわれ、赤道に近い地域の国内放送用。
90mバンド:3200〜3400kHz - 120mバンド同様の使い方。
75mバンド:3900〜4000kHz - 一部の国で国内放送用に利用。ラジオ日経。
60mバンド:4750〜5060kHz - 一部の国で国内放送用に利用。
49mバンド:5900〜6200kHz - ラジオ日経。海外放送が集中。
41mバンド:7100〜7350kHz -安定した 国際放送受信。
31mバンド:9400〜9905kHz - 短波放送のメインストリート。ラジオ日経。
25mバンド:11600〜12100kHz - 短波放送のメインストリート。
22mバンド:13570〜13870kHz - 歴史が浅い国際バンド。
19mバンド:15100〜15800kHz - 海外放送専用バンド。遠距離局の受信が可能。
16mバンド:17480〜17900kHz - 19mバンドに特性が似ている。
13mバンド:21450〜21850kHz - 夏場の昼間に遠距離受信が可能。
11mバンド:25600〜26100kHz - 太陽活動の活発な時期に効果大。

 このように季節や時間帯(昼/夜)によって電離層(主にF層)の働きが異なるので冬場や夜間は低い周波数が良好に届き、夏場・昼間は高い周波数が良好になります。太陽の活動が活発になるとさらにこの傾向が強まりまり、結果として放送が聞こえる場所が変わってしまいます。このため、季節や時間帯によって、目的とする場所で放送が聞こえるように、放送に使う周波数を変える必要があります。
 その昔、船舶通信を行っていた海岸局は世界に散らばる船舶と安定的な通信を確保するために短波の特性を利用した多くの周波数を使い分けていたのもこの性質のためです。
 NHKは、海外に住む日本人向けに放送(NHKワールド・ラジオ日本)を行っており、世界中で聞こえるように、他の国の放送局で中継して貰ったり、逆に他の国の放送を中継したりして相互に協力しています。またラジオ日経の場合は、日本全国で聞こえるようにするため、複数の周波数を複数の場所を用いて放送するなどしています。

周波数の分類
日本語名称 波長 周波数 英語名称
極極超長波 30Tm〜10Gm 10マイナス3Hz〜3Hz ULF(ultra low frequency)
極超長波 100000km〜100km 3Hz〜3kHz ELF(extremely low frequency)
超長波 100km〜10km 3kHz〜30kHz VLF(very low frequency)
長波 10km〜1km 30kHz〜300kHz LF(low frequency)
中波 1km〜100m 300kHz〜3MHz MF(medium frequency)
短波 100m〜10m 3MHz〜30MHz HF(high frequency)
超短波 10m〜1m 30MHz〜300MHz VHF(very high frequency)
極超短波 1m〜100mm 300MHz〜3GHz UHF(ultra high frequency)
マイクロ波 100mm〜10mm 3GHz〜30GHz SHF(super high frequency)
ミリメートル波 10mm〜1mm 30GHz〜300GHz EHF(extremely high frequency)
テラヘルツ波
(サブミリ波)
1mm〜0.1mm 300GHz〜3THz

波長と周波数
 周波数は1秒間に振動する電磁放射の数を数値に表したものであることはお話ししました。ラジオ日経の第1放送JOZ,JOZ4は3.925Mhzで放送されています。この周波数を波長に表すと75mになりその数値をそのまま周波数表示したのがメーターバンドで、つまり1波長75メートルの長さの電波である事を表しています
 計算は光の速さを振動数(周波数)で割り算すると求められます。これは放送を聞くために自分でアンテナを作ったり実験するときに大きな意味をもち重要なことです。


 コールサイン
 日本に限らず電波を発射する無線局は国際電気通信条約の取り決めにより細かいルールが決められていて、日本も例外ではありません。日本においては総務省から指定されます。
 中波放送は"JO"+アルファベット2文字の構成で、NHKの場合、基幹局の末尾は総合放送(ラジオ第一・総合テレビ・FMラジオ)の場合K、教育放送(ラジオ第二・教育テレビ)はBが割り振られています。
 民間放送の親局の場合、中波ラジオ・テレビ併営、または中波ラジオ単独の場合は末尾にRかFが割り振られています。
 

 ノイズと受信障害 
 PLC問題の去就は気になることの一つですが、ローカルノイズと呼ばれるノイズなどによる受信環境は日増しに悪化しているといえます。家庭内の電子機器を始めコンピュータやインバータ電子機器は重大なノイズ源であり、しかも最近の高性能自動車がノイズ源になっていることもあり、新しい技術は電波を用いる機器に重大な影響を与えることが気になります。

 中波ラジオの受信でもノイズに対する工夫が不可欠ですが、この対応もそれなりに面白い課題でもあります。
 将来の展望を軽々しく言うつもりはありませんが、短波の世界でも財政面、政治面などあらゆる環境の影響で海外放送が削減されたり、不安定な短波を中波に置き換えるなどの対応が図られています。どちらにしても無傷ではおれないのがこの遊びの特徴かも知れません。