ナディーは 日本初のタンデム二代目犬です 兵庫県盲導犬協会の理事で、関西盲導犬協会のブリーダーでもある、竹田さんの繁殖犬の名前はトモコです。トモコは、カナダの盲導犬協会から贈られたゴールデンで、多和田訓練部長の奥さんの名前を、是非ともつけたいとのことで決まったそうです。反対にカナダに贈った二頭の犬の名前を今すぐつけてほしいと電話で依頼され、多和田さんは思わずサクラとフジと答えたとのこと、ほほえましいお話です。  食堂で私が食事をしていました。モネはテーブルの下でおとなしくダウンしています。すると、たまたまブリーダーの加藤さんと出会いました。なんと繁殖犬のビリーは、モネのお父さんでした「モネのお父さんだよ」。しっぽフリフリ、モネは嬉しそうです。盲導犬は繁殖犬の子として生まれ、生後四十五日でパピーウォーカーのところに来て一才まで預けられます。そしてさらに一年間訓練を受け、盲人である使用者と出会うことで盲導犬が誕生します。盲導犬はおよそ十年間活動した後、使用者と別れリタイヤ犬として余生をおくります。レトリーバーの寿命は十三年あまりですから余生と言ってもそう長くはありません。さらに長年の活動で、ケガの後遺症や病気を持っているリタイヤ犬の最後を、暖かく見守る人たちもいることを知り、私は頭が下がる思いです。  よしこさん御夫妻は、盲導犬ゼナを二人で共有します。すなわちゼナは、タンデム犬なのです。元来、盲導犬は、一人に一頭と言う考え方がありましたが、定められた命令を受けて反応する盲導犬は、複数の使用者を受け入れるはずだと言うことで、タンデム犬が登場しました。現在全国で十三頭のタンデム犬が活動しています。ゼナは、八年あまり活動しましたが、そろそろリタイヤさせる時期ですと言うので、タンデム犬二代目ナディーと共同訓練に入るためにやって来ました。 今日は、ゼナと最後の食事をしていますが、よしこだんはまだ迷っていました。するとその時です、テーブルの下でゼナが急に、「キャンキャーン」。「手を上に上げている、神経痛だね、よしよし」。訓練士の青木さんが、ゼナをさすっています。「こんなことは初めてよ。やっぱりリタイヤの時期だったのね」。「以前バイクに前足をひっかけられた事があったんです」、よしこさん御夫妻がつぶやきました。  モネには、病気やケガはさせまいぞと決意する私ですが、震災さえなければ、恵子さんと二人でこれたのです。モネもタンデム犬だったのに残念です。「モネ、神戸に帰ったら恵子さんとも仲良くしようなあ。グッドグッド。」