宝くじは 駄目みたいです  先日兵庫県盲導犬協会の田上会長と会った時のことです。「島田君、新オリエンタルの舞台は大成功でご苦労さまでした。実はプロのカメラマンにお願いしていた写真が出来上がってきましてね。それが実にいい出来栄えなんだよ。あの美人のチヒロちゃんが君にモネを手渡す場面なんだよ。君は手だけが写っていてね。さすがプロだね。いい写真が出来ました」。「私は手だけですか?手だけねェーさすがプロですねぇー」。  私は、気分転換をかねて、阪急三ノ宮駅あたりを歩いていました。新しく出来た仮設の映画館で、震災の長田の街を舞台にした「トラさん」が、上映されているとのことでしたが、見付けることはできません。耳をすませてみると、オープンしたばかりのイカリスーパーの係員が、「おさないで下さい」を連呼しています。「モネ、あっちは ヤバそう、こっちにしよう」。ウロウロしていたら、宝くじ売り場があるようです。  「引き換え券がないんだけれど、年末ジャンボ二十枚ほど売っていただけませんか」と私はひかえめです。すると「いくらでもお売りしますよ」。「モネ ラッキー グッドだね」。ポケットからお金をだしつつ、モネの頭をナデナデ、「バラ券でお願いします」「あの、近畿宝くじもいかがですか」。すかさず私は「一億三千万円当たりますから、もう充分です、欲はもうしません」。なんだか爽やかです。映画のトラさんの気分かもしれません。  帰りの電車の中で、モネは私の足にもたれてダウンしています。ドアが開くたびに「モネ ドンウォーリー」と小声でささやきながらも、頭の中では、一億三千万円の使い道を考えています。けれども私の買ったのはバラ券ですから、一億三千万円は当たらないのです。どうやら今年の宝くじも駄目なようです。