おーい みんな笑うんだよ 私は、毎夜調理室の冷蔵庫から缶ビールを失敬しては飲んでいました。訓練所には、外国から贈られた三頭の実物大の盲導犬募金箱があります。頭をポンポンたたいてみて、お腹の減っていそうなワンちゃんにビール代を入れて帰ります。訓練所のみなさん、お世話になりました。 道路事情はまだまだ最悪で、神戸市内を通って鈴蘭台へ行くことは困難です。車は宝塚をめざします。こちらも被害が大きく、のきなみ家が傾いています。有馬の旅館街もひっそりしています。神鉄有馬線はまだ不通なのです。 これからモネとくらすマンション「エスプリ」は、なんとか建っているようです。エレベーターも大丈夫、「只今、モネも一緒ですよ。」「うわあ うわあ」 恵子さんは舞い上がっています。さっそく駅前のオリエンテーションです。鈴蘭台は道路が狭く歩道もガタガタで、さらに震災の影響で車と人が急に増えました。モネはオドオドしている様子です。 恵子さんはモネが、今どこにいるのか気掛かりで仕方がありません。そうです、ラクダの鈴をつけてみましょう。アレレ モネは体を上下させて歩かないので、ラクダの鈴は鳴りません。それではネコの鈴です。これはバッチリ、モネはしばらくネコの鈴です。 やっとおちついてモネはリビングでダウン、私はラジオ片手に便座でおしりを暖めて、震災ニュースを聞いていると涙が出てきます。ペーパーをちぎって目頭を押さえていると、「おおー、こんな時にこんな所でちょっとやばいぞ、かなりの余震だ」。あれモネの鈴がなっている。「モネが首を上げた」陽次郎の声、私は中腰で叫びます、「モネが怖がるー おーい みんな笑えー」。