ピンチ 盲導犬

神激震地域の盲導犬は、停電、断水、ガス停止の中、頑張りました。給水の列に使用者とともに並び、放置されたままの車や、崩れた家を避けながら、使用者とともに歩きました。けれども相次ぐ余震で、体のふるえがとまりません。やむなく使用者の皆さんは、盲導犬の一次避難を決意しました。

難所で迎えの車にポニーを乗せたら、ただならぬ雰囲気を感じたポニーが飛び出ようとしました。「ウエイト(待て)」。かずえさんは、胸の潰れる思いで車を見送りました。福祉学科二回生の玲子さんは、電車通学をしていましたが、震災後ハノンが電車の振動を怖がり、ドアが開くと外へ出たがるようになりました。彼女の実家は、隣家が傾いてしまったため、危険をさけて訓練所にハノンともども避難しました。シルキーは、職員が散歩させようとすると途中で立ち止まり、どうにも動きません。エースはストレス性の湿疹ができました。

神激震地域を、歩かなくてはならないモネと私の訓練には、まだ何か欠けている物足りなさを感じていたのを、多和田さんが見てとりました。「来週から、盲導犬と白杖を組み合わせた訓練に入りましょう」。「ええー、白杖を使ってもいいのですか」。「安全性と能率がグーンとよくなります」。「ほんとにー」。私は半信半疑です。こんなことなら木刀を捨てるんじゃなかった。白杖は使わないと決めたんですから、こまったものです。

多和田さんは続けます。「盲導犬用の杖にはマシュマロチップがついていて、一般の杖とは使い方が違います。そして、盲導犬と杖の動きが合わなくてはいけません」。それなら、少林寺拳法の気で白杖を運用すればよい。そうすると私が孫悟空で、モネがキントウ雲。モネが犬で私が猿、これはチトまずいから、二人の仲をとりもつのが白杖のニョイ棒。これで三位一体、よし出来ました。

鬼に金棒ならぬ島田に白杖。どーんとこい震災の街。

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