モネと少林寺拳法
単独での館内歩行訓練が始まりました。訓練所はかなりのもので二階が居住部分です。廊下をはさんで、和室洋室の個室と生活関連部署に大別されます。調理室には、盲導犬のフードがありました。おや、冷蔵庫があります。「缶ビールにシャンパン、これはラッキー」、風呂場はお湯が出るタイプで、いつでも自由に入れます。トイレは
「オシリがあったか便座、これはなによりです。洗たく場には洗たく機と乾燥機、バッチリです。さっそく、恵子さんに電話で報告。神戸はまだ余震が続いています。 午後の訓練は、ロビーに集合とのこと。私がソファーに座っていると、一頭の盲導犬が連れられてきました。それがモネです。イエローのラブラドールで体重二十七キロの女の子です。 「意外といいニオイだ グリーンのイメージ」。うまくやっていけそうです。リードによる館内歩行の開始です。階段の手前で、モネの止まるのがリードに伝わります。「こりゃ凄いや」。ドアの前でも止まり座ります。ドアを開けて、私が呼ぶのをモネは、待っています。「カムヒール」、モネは回りこんで、私の左側へやって来ます。 「やるじゃないかモネ」、「モネにおみやげ、はいどうぞ」。リュックの内から特製タオルを取り出すとモネはパックン、ぐいぐい引っ張ります。タオル遊びが好きなようです。私も嫌いなほうじゃありません。「モネ、これが少林寺拳法のかぎ手だ、びくともしないだろう」。今度は私がモネを、ぐいぐい引っ張り回します。タオルを左右に持ちかえては、ふり回す、ふり回す。モネの鼻息が荒くなり、首を激しく振ります。「そんな時は、外カギ手から、えーい」。送り小手投げを思い切ってかけてみたら、おやまさか、モネが腹を上にしてころがっています。ポンととどめの突きを、入れます。 「ちょっとやりすぎたかな、モネ、恵子さんには秘密やでェー、グッド、グッド」。 |