シルキーは 親子タンデム犬になりました

災後の復興工事は、白杖歩行の皆さんにとっても大きな問題です。シルキー早苗さんの娘さんも、日々変化する街で、単独白杖歩行が出来なくなり、盲導犬シルキーを、お母さんと娘さんとで使用するタンデム犬にすることにしました。

共同訓練は、四月一日から始まり、二十六日に無事終了しました。復興の街を、意欲的に歩きたい気持ちを、「私の挑戦」と表現されています。現在全国には、十三頭のタンデム犬が活躍していますが、その内二頭は、兵庫県盲導犬協会所属のポニーとシルキーです。しかも、親子で使用するタンデム犬は、シルキーが初めてです。

ネと私は、事務局の用事を済ませて、鈴蘭台駅に下車。なんだか駅前が騒がしい。道路工事中です。朝ここを通った時は、工事の気配など全くありませんでした。ガードマンさんが、私に何か話しかけているけれど、聞き取れるものじゃありません。いたる所で騒音の渦。空気がピリピリ震えています。幅の狭い段付き歩道、モネを左の車道側に寄せようとしてもいやがります。無理もありません。

ダンダーン、バフバッフーン。熱風のあまり、私が思わず顔を右にそむけた瞬間、モネもはじかれたように右へ。「しまった、溝だ 深いぞ」。ここでくじけると、復興の街は歩けるものじゃありません。負けてなるものか、とばかりに、落とした右足を跳ね上げて、少林寺拳法の伏虎構えから、リードを大きく回して「モネ、ワンモア、トライ」。再び大型機械の爆裂音、ダダダーン、バフバフバフッーン。モネが右に寄った。私はすかさずモネの後ろへ、「ネバーマインド、モネ、グッド」

の時、モネは、右足の内側をやけどしていました。盲導犬歩行の安全性や、機動性は白杖歩行よりはるかに優れていますが、震災の街や、復興の街では、必ずしも絶対的なものではありません。「盲導犬に幸いあれ」と願う私です。

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