モネ 新神戸オリエンタル劇場の舞台に登場

モネが、「人間賛歌、神戸の風」に出演することになりました。西宮市の市民劇団ASAは、毎年演劇発表会を行なってきましたが、今年のテーマは、「阪神大震災」です。

劇団の脚本家は、何んと兵庫県盲導犬協会谷口正信監事と評議員の中田洲豪さんですから、脚本はバッチリなんですが、私は大根役者でどうにもなりません。見かねた盲導犬協会監事の奥さんの谷口智子さんが、アドバイスをくれましたので少し気分が楽になりました。

ところがもうひとつ問題がありました。それはモネのおしっこです。モネは、神戸に来てから何度も試みましたが、戸外でのおしっこはどうもうまくいきません。 「モネ、ここには人がこないからおしっこしようね」。楽屋のトイレに連れこみます。腰にぶら下げたションパックをシャラシャラさせるばかりです。「モネ、おしっこを恵子さんへのお土産にするか」。

開演のブザーがなりました。舞台裏に集合です。地震当時の病院や、避難所の様子がミュージカル形式で次々と再現されます。そろそろモネの出番です。

ミュージカルのシナリオは「小学校の島田先生は、身を挺して交通事故からチヒロちゃんを救いましたが失明してしまいました。それから何年かたち、チヒロちゃんが先生のために申し込んでいた盲導犬を、今は鍼院を開業している島田先生に貸与できるのです。チヒロちゃんは、モネを島田先生に手渡します。それを見守る桝野事務局長は、盲導犬の現状を観客に訴えます。島田先生とモネは舞台を歩いています。」

スーツにネクタイ、パリッときめた事務長が「モネと歩いた感想はいかがですか?」少林寺拳法の黒いサムエに赤いマンジマークをつけた島田先生は、私も、スーツにすべきだったかなあ、と後悔しつつ調子はずれの声で、「盲導犬がこんなに素晴らしいとは知りませんでした。これで少林寺拳法の道場に安全に通えます」。台本通りなんですが、やっぱりどこか変でした。それに、さきほどから写真を撮られているようで、これも気になるところです。最後にナレーションが流れます。「それから1年後、阪神大震災がおきた時、盲導犬モネは、全壊の家から島田先生を無事に脱出させました」。

電車を乗りついで鈴蘭台駅、「モネ、急げ急げおしっこおしっこだ」。モネは、飛ぶようにマンションへ、エレベーターからドアにまっしぐら、「モネ、イズ ホーム 恵子さん、モネのおしっこ」。てんやわんやの二人と一匹は、ベランダに突撃、滑り込みセーフ、パックの中でおしっこチャプチャプ。モネはしっぽフリフリ、私はため息ひとつ、「これは 何とかせんとあかんー」。

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