緊急 震災の街は生きています

区から、神戸市内へ出るルートの一つは神戸電鉄です。まだ長田駅から先は不通ですが、学生時代よく乗った電車ですから、「何とかなるさ」とばかり鈴蘭台駅にやってきました。

切符を買って改札口、階段そしてホーム、ここが危険地帯、まず左に寄せてしばらく前進、そこから「ライトゴー モネ」。ホームを横断、モネが右九十度、点字ブロック確認、「モネ ヒール グッド」汗が出ます。電車が入ってきます。「白線の内にてお待ち下さい」私のためのアナウンスに聞こえます。ドアの開く音、右だ、右のドアにアタック。「モネよってドア」ここだ。右足で確認「グッド ゴー」。なんとか電車に乗れたようです。終点の長田駅から湊川まで歩く予定です。電車を降りると、人の後について左側を歩いて改札口を出ます。この辺りは、まだまだ自信のあるところです。

い階段を下ると、モネが歩道から車道へ出ようとします。放置自転車がいっぱいです。回りこむと「モネ カム グッド」。モネは、鉄板が大嫌い。道路工事をしているらしい。騒音も激しい。私はハーネスのハンドルを放して、白杖をつきながらリードでモネを引っぱります。ハンドルを放すと盲導犬は、ただの犬になるのです。

車がビューンビューン、やっと歩道をさがします。「よし ここからはモネだ、ストレート ゴー」。あれあれモネが迷います。歩道がめくれ上がってガレキの山、さらに基準になる建物や壁がことごとく崩れていて、メンタルマップが描けません。頭の中で、盲導犬用の地図が出来ないと歩けません。

路上に倒れた家に、ブルトーザーが猛烈にアタックしています。やっと湊川公園のトンネルまで来ました。ここから西側は、大きな被害を受けた長田の街です。壊れたビルや屋根をおおう一面のブルーシートの海だそうです。

おっ、余震だ。「あははっモネ グッド」。これはいけません、急いで帰ることにします。モネを引っぱって市場にさしかかった時、あまりにも美しいえもいえぬ新鮮なイチゴの香り、生命感あふれる香りです。

この街は生きているのです。今はうちひしがれていても、必ず立ち直る街なのです。

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